馬乳を発酵させてエタノールを生成する自然飲料、馬乳酒
馬乳酒は、馬の飼育が盛んなモンゴルで馬の乳を発酵させた乳飲料です。 馬乳の中に含まれている乳糖が酵母の働きによってエタノールが生じるので醸造酒という見解もあります。 このエタノール生成時の乳酸菌による酵母反応は乳酸発酵も同時に起こるため馬乳酒独自の酸味を作り出します。 馬入手の起源に定説はありませんが、中央アジアで人と家畜が一緒に暮らし始めた頃から自然と馬乳を飲む文化が生まれたといわれています。 マルコポーロの記録やチンギスハーンの逸話の中にも馬乳酒が登場するので歴史は深いものといえます。 モンゴルは「人間は赤(肉)と白(乳製品)の食べ物を食べて生きている」という概念があり、 野菜の不足しがちだったモンゴルの遊牧民が代わりに乳製品を摂取する事によってミララル・ビタミンを補給していたそうです。 自然発生で生じるエタノールのみを用いるので、アルコール度数は1〜3%と低く、 ビタミンCや栄養補給にもなるので大人だけでなく赤ちゃんの歳から飲用されています。 エタノールが含まれている事から世界的には「酒」とみなされているのですが、 モンゴル人にとってはヨーグルト感覚で摂取するもので、馬乳酒を食事代わりに楽しむ事もあり、夏のモンゴルの主食・主役の役目をはたしています。 馬乳酒は1リットル400Kcalで、夏場には平均して一日0.5〜1.5リットル飲用されています。
馬乳酒は馬が出産を終えた初夏〜9月までの約2か月の搾乳期間があるだけです。 他の時期は搾乳ができず、できたとしても発酵に適する気温には達しません。 一度の搾乳で一匹から得られる馬乳は約200mLです。 まず仔馬に馬乳を吸わせてから、母馬を安心させてから採取します。 その搾りたての馬乳に、前日の残りの馬乳(スクータ)を加えてからひたすら攪拌を行います。 多いときには一万回もかきまぜられ、2〜3日この作業を丹念に行うと美味しい馬乳酒ができあがると言われています。